豊後水道往復 2社乗り比べの旅 - 4

フェリーさんふらわあ

《さんふらわあ あいぼり》に再会  

2016年9月18〜19日 別府⇒大阪南港コスモFT(※)


※2017年10月1日から、「さんふらわあターミナル(大阪)」に改名されました。

■臼杵の短くも鮮烈な印象

 15時10分のほぼ定刻に臼杵到着。ここから陸路で本日2回目の別府へ移動し、「さんふらわあ あいぼり」で帰阪する(右図の(4)

 この臼杵という街、歩いてみるとなんだかいい感じ、なのである。河口に開けたわずかな平地を山並みが取り囲み、その軸となる位置に港があって船がいる。岸壁から見渡した街並みは、なぜだか眺めていて気持ちがいい。ひとことで言うと“がちゃがちゃしていない”のだ。高い建物もけばけばしい看板もなく、「臼杵石仏」のひなびたイメージにあやかったような落ち着いた色合いの屋根屋根が、山すそまでひろがっている。


 演歌の一篇でも書けそうな雨上がりの港町を15分歩いて臼杵駅へ。1915年大正4年)開設と言うから結構古い。本屋を入ると待合があり、それに接して1番ホーム、さらに跨線橋で島式ホームへ・・・という構造は標準的なものではあるが、鉄道院の制式の流れを汲む、ある意味ぜいたくな造り、といえるのかも知れない。我が地元のJR阪和線各駅には、本屋内の待合はほとんど見られない。往来に面してすぐ改札口があり、ホームである。往年の「社線」、つまり私鉄を生い立ちとするが故の設計思想の違いなのかも知れない。
 話が「塩分」から「鉄分」へと脱線してしまったが、臼杵といえばそもそもが由緒ある城下町。武家屋敷をそのまま活かした料理旅館もあるという。いずれゆっくり再訪しなければならない。

 


  
港に注ぐ、その名も「海添川」。
遡って行けば臼杵駅近くに出られる



街中に現れる鳥居は、臼杵城内の
卯寅稲荷神社への参道のようだ


渋い色合いと形状の臼杵駅。
なんとなく犬用のケージを連想する


見所がてんこもりらしき臼杵の街。
船で乗り降りするだけでは惜しい


■港町・別府の残り香

 「あかつき丸」で八幡浜へ渡ってから約8時間。宵闇の迫る別府ターミナルに戻ってみると、待合室は目出度いことに座る席もないほど賑わっている。居場所がないので、正面に賑々しく構えている「さんふらわあ歴史館」で時間をつぶす。
 さんふらわあの、というよりは往年の客船たちのモデルシップがメインの展示コーナーだが、名船「さんふらわあ」を社名に戴く企業の矜持として、この様な展示を常設するのは大変すばらしい。しかも大消費地・大阪ではなく、歴史と伝統ある別府の地に、だ(南港ATCでは家賃が高いせいもあるだろうが)。栄えある「別府ブランド」をどう活用するかは、この会社にとって永遠のテーマだろう。

 展示の中に「こはく丸」のモデルシップがある。今から30年近く前、この船はある電機メーカー(私の勤務先だ)のチャーターで船上ショールームに改装され、「コロンブス号」のネーミングで18ヶ月にわたって日本中を回っていたことがある。仕事で船内を見学した時には、天井が狭く、通路もすれ違いがやっと(個人の感想です)なほど狭くてびっくりした。ある時は寄港地で、老朽化のために機関室が浸水し、船長みずからパンツ一丁になってバケツで水を汲み出した、というまことしやかなウラ話も、当時の運営スタッフから聞いたことがある。「こはく丸」の名は、入社数年目の若い想い出につながっている。
 出航1
時間前、乗船開始のアナウンスが流れた。もう少し、見ていたかったのだが。
 
 



国際観光港最寄の別府大学駅。
朝は別府駅からバスだったので、
アプローチを変えてみる


港へのバスの本数は多くないが、
徒歩でもたいした距離ではない




ターミナルも立派なものだが
やっぱり船はさらに大きい。

7月の見学会で徒歩乗船したランプ。
今は続々と積み込み中


チケットカウンターはこんな感じで
まあこんなもんだろ〜、と思いきや・・・


待合室はこの盛況ぶり!
まことに喜ばしいことです



・・・とはいえ居場所がないので、
さんふらわあ記念館へ

「こはく丸」を眺めながら。会社人生、
それなりにいろいろあったなー。




乗船のアナウンスに背中を押されて
乗船口へ上がりますと・・・


なんじゃこりゃの魔界スペース。
たぶんあまり前向きな話ではなさそう



気を取り直して搭乗橋へ。
リゾート風の演出はうれしいもの

別府の歴史のパネル展示も。
通路の途中でゆっくり見れず残念



■港町・別府の残り香

 いよいよ「さんふらわあ あいぼり」に乗り込む。2ヶ月前はただの見学者で、船上にいながら陸に上がったも同然だったが、今日は晴れてスタンダード船室の客である。往路の神戸〜大分「さんふらわあ ぱーる」では、新たに設けられた「プライベートベッド」を利用したので、今日の復路では趣向を変えて、個室の1人部屋を奮発した。
 個室だから居心地がいいのはもちろんありがたいが、ただひと晩寝るだけなら相部屋でいいのに、話のタネに勢いで乗ってしまった、という罪悪感がつきまとう。個室というものは、移動中も働き続けるビジネスマンや赤ちゃん連れのお母さん、そして周囲に顔を見られずに高飛びしたい“その筋”の方々など、しかるべき理由のある方にこそ似合うのであって、私のようなただの船好きのオッサン(いま読んでいるあなたのことではない)には、分不相応のような気がして仕方がない。

 私がよく利用する瀬戸内航路は夜に出て朝に着くことがほとんどなので、「昼間の船内」を目にする時間はほとんどない。それだけに、見学会で探訪した“営業時間外”の船内には生気が感じられず、夜の盛り場を朝の通勤時に通りかかったような侘しさを感じたものだが、今日の“あいぼり”は、若々しい嬌声と浮き立つような賑わいを載せている。やはり船は、人を乗せ、波を切っていてこそ輝くものだと思う。

 



家族で船旅。楽しいやろなあ。


見学会の時(右半分)に出入りした、
車両デッキからの扉。



遠征試合らしき団体さんや
家族連れで活気がある

乗船開始早々繁盛するレストラン。
ちょっと出遅れたかな〜


プロムナードでもお食事中


思い思いにくつろぐ人々でいっぱい


これは見学会での同じ場所。
灯りのない船内はどこか侘しい


旅を支える若いスタッフさん



いよいよ本当に九州とお別れ


何度来てもいいところですね


見学でブリッジへ向った通路も
今日は閉ざされています


名残を惜しむうちにも日は落ちて



♪街の灯りが とてもきれいね別府・・・
(唄が古すぎ!字あまりだし。)


街のシンボル・別府タワーがお見送り
(肉眼じゃないと無理〜)



探索も一段落してようやくお食事。
レストランはすでに閉店モード・・・


少量多品種とはいえ高カロリーだなあ
(執筆時現在ダイエット中!)




今日はスタンダードの1人部屋


料金高いですが落ち着きます


アメニティのタオルはもちろん使わず
封も切らずにそのままコレクション


夜更けの船内には、
旅の余韻がただよい・・・




そして夜明けの大阪には、
けだるさがただよっていた


建設中の志布志航路新ターミナル。
建物外観が姿を現し始めた



下船口を賑わせた人々も何処へやら


めいめいに散り果てて一人旅は終了!

                  
 (完)

(C) KIXLOCAL(Takashi Kishi) all rights reserved, 2017 . 第1レッグ「さんふらわあ ぱーる」へ


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